水良ければ良い品が出来るという教えを引き継ぎ、明治33年から「お酢」作りをしています。昔ながらの製法と九州内の原料にこだわり、玄米黒酢、純米酢、無農薬玄米麹、米麹、麦麹、甘酒、味噌、塩麹などを製造しています。

無農薬玄米麹・玄米酢(玄米黒酢)が出来るまで

玄米麹ができるまで

1日目

精米と洗米・浸漬

まず、無農薬の玄米を発芽しやすくする為に、精米機でほんの少しだけ傷を付け吸水が早くなるようにします。

その後、マイクロバブルで綺麗に洗米します。

洗米した玄米は、備長炭を電極にして電圧をかけた水を使用して、数回水換えをしながら翌日の朝までたっぷりの水に浸します。この水は玄米の中まで浸透しやすく、余計な糊や不純物を洗い流します。また、よく浸透することによって発芽も短時間で完了します。

下記写真のように玄米の場合は、ほんの少し精米して傷をつけ、吸水を早くすることで短時間で発芽させます。

胚芽がぷっくりすれば大丈夫です。玄米は全て安全な発芽玄米にしてから玄米麹にします。

白っぽく見えますが、水を吸った状態の玄米は白っぽくなりうます。

 2日目

米蒸し

朝から、前日に洗米した無農薬の玄米を蒸します。

木製の台にゴザを敷き、その上に蒸米を運んでいきます。

床もみ

蒸した米を床に広げ、「床もみ」という作業をします。米の塊をほぐして人肌くらいの温度まで冷まし、麹菌をまきよくかきまぜます。

室に入れる

麹菌をまいたら、室という部屋の木桶の中に蒸し米を入れていきます。 蒸し米は、毛布や布で包み、蓋をして一晩保温します。この間に麹菌が増殖していきます。(写真は白米)

切り返し(一回目)

夕方に、米が固まってくるので一度切り返しという作業をします。これで蒸し米の中に酸素を供給し、麹菌もまんべんなく広がるようにします。この後、麹菌達が増えていくなかで発熱していきます。(写真は白米)

3日目

切り返し(二回目)

朝からもう一度切り返しをして、蒸し米をほぐします。この時既に蒸し米に白い麹菌が付き始めています。

玄米は白米より発熱が強く、ポカポカです。

玄米に白い麹菌が増え始めています。

盛り込み

「盛り込み」という作業です。蒸し米を室蓋(モロブタ)という木箱に入れていきます。 一回の作業で約200枚以上の室蓋に盛り込みます。 最近では麹造りは機械化され、コンピューターでの温度管理、オートメーションでの製麹が行われるのが主流ですが、川添酢造では昔ながらの手作りにこだわり、麹本来の力と気化熱を使い温度管理しております。麹菌達には厳しいですが、それにより強い麹が出来ます。もちろん地球環境には優しいです。(写真は白米)

仲仕事

「仲仕事」という作業です。盛り込んだ蒸し米をよく混ぜ、小さな塊も崩します。冬場は山盛りに戻し、夏場などは山の中心の温度が上がり過ぎないように、ドーナツ状に形を整え温度が均一になるようにします。(写真は白米)

仕舞仕事

 

「仕舞仕事」という作業です。 盛り込んだ蒸し米を全て平らににて、濡らした布を被せて重ねていきます。蒸し米の温度が上がりすぎないように、濡れた布の気化熱で冷却して温度を保ちます。この方法を使っているところはほとんどありません。(写真は白米)

3日目

出麹

夜の間も、温度が上がりすぎていないか、下がりすぎていないかなど気を配り、しっかり麹菌が生えて固まったら生の玄米麹の出来上がりです。

白い麹菌が沢山生えています。

こちらは甘酒麹(白米麹)の生麹です。

拡大すると、麹菌がしっかりハゼ込み、麹の花が咲いているのがわかります。

麹が良くできていたら、全て乾燥室に運びます。

乾燥

そのまま乾燥させると、麹がモロブタに張り付き、縮んでひび割れてしまいますので、生麹を十の字にカットして、ヘラでひっくり返します。

裏返しになった麹は2日間低温乾燥します。麹が縮んで隙間ができています。

この乾燥工程の間にも、麹菌は米の中心に向かって菌糸を伸ばします。

この乾燥が終わることで、生麹より酵素量の多い乾燥麹ができます。

よく生麹の方が「力価が強い」と言われますが、酵素の活性の強さは水分量で変わってきます。もちろん生麹と乾燥麹の状態では生麹の方が水分が多く、酵素活性が高くなります。しかし、麹を使った甘酒や塩麹など、なんでも水分が入りますので乾燥麹の酵素活性も上がります。酵素量は乾燥麹の方が多いので、結果、乾燥麹の方が酵素の力は強くなるのです。

川添酢造の玄米酢(玄米黒酢)が出来るまで

水麹造り

「玄米麹が出来るまで」と同じ作り方で作った無農薬・無化学肥料の玄米麹。

百姓アグリなかいさんが、こだわりぬいて育てた玄米を使います。

この甕は、明治30年頃から初代が集めた「肥前の大甕」だそうです。昭和までは沢山ありましたが、今では随分数が減りました。現在「肥前の大甕」を作る窯元は残っておらず、貴重な甕となります。

甕に水を溜め、麹を入れてよくかき混ぜます。麹の中の酵素などが水に出ていき、発酵の準備段階です。これを水麹といいます。ここに、あらかじめ2週間前くらいに発酵させておいた「酒母」を入れます。これで、水麹に酵母菌(アルコールを作る菌)が混ざります。

無農薬玄米を蒸す

玄米麹の原料と同じ、無農薬玄米を蒸します。

蒸し米をカメに入れる

先ほどの水麹に蒸した玄米を入れていきます。玄米からお酒(お酢)を作る為には、沢山の麹と蒸米が必要です。

アルコール発酵

麹菌が出した酵素で、お米のデンプンがブドウ糖に分解され、そのブドウ糖を酵母菌が分解(嫌気的反応)し、エタノールと二酸化炭素を出します。

グツグツと発酵している時は、顔を近づけるだけで酔ってしまいそうです。このアルコール発酵に1か月以上かけます。

穀物酢や安価な米酢と違い、たっぷりの玄米で作る玄米酢は、糖化以外にも玄米のタンパク質が、タンパク質分解酵素によってアミノ酸へと分解されます。また、日本酒では磨きで削ってしまう部分も、玄米黒酢では栄養豊富で旨みたっぷりのお酢になるために必要です。

また、お米だけから作る玄米酢や純米酢は、出来る酸が「酢酸」だけでなく、クエン酸やコハク酸、グルコン酸など、さまざまな有機酸が作られます。これがクエン酸回路の働きを助けたり、腸内の環境を整えたりするのに役に立ちます。

酢酸発酵

お酒が出来たら、魔法瓶のようにある程度保温力のある発酵槽へ移し、生のお酢を入れて酢酸発酵させます。

生のお酢には生きた酢酸菌がいますので、酢酸菌は発熱しながら発酵液の表面に菌膜を張り、発酵液中の「エタノール」を「酸素」と反応させ「酢酸」に変えていきます。この酢酸発酵に2か月くらいかかります。

酢酸発酵の仕組みは、酢酸菌の表面に「アルコール脱水素酵素」と「アルデヒド脱水素酵素」という2つの酢酸菌酵素があり、アルコール→(アルコール脱水素酵素)→アルデヒド→(アルデヒド脱水素酵素)→酢酸の順番で変化していきます。つまり、私たちがお酒を飲んで肝臓でアルコールを代謝する事とそっくりです。私たちの体内でも酢酸が作られています。

 

お酢を絞る

出来たお酢を袋に入れて絞ります。

絞ったお酢は、カメの中でさらに熟成させ、全行程で半年前後で出荷されます。

玄米酢は、玄米から作られますので黒酢と同じ原料ですが、室内でお酒からお酢へと二段階で発酵させ、炭埋などで熟成を早める事により、淡い色のお酢になります。ちなみに、玄米酢もさらに熟成させると色が褐色に変化していきます。玄米酢の色が褐色になれば、それは黒酢です。黒酢には、大麦黒酢と玄米黒酢がありますが、玄米黒酢と玄米酢の原料は同じです。(製法には少し違いがあります。黒酢は外に置いたカメで、アルコール発酵と酢酸発酵を同時に行います。)

お酢の種類の参考に・・・

 

お酢の種類です。米から作られていると思われている「米酢」ですが、1ℓあたりに40gのお米が入っていれば「米酢」と呼べます。では、実際何から出来ているかというと、ほとんどが業務用のアルコールからできています。本当に米から出来ているのは、純米酢、米黒酢(玄米酢)です。(もちろん、米酢も良いものですが、実は米から出来ていないという話です)

川添酢造の純米酢、玄米酢は、1ℓあたり、300g近いお米を使用しています。

静置発酵とは、川添酢造でも行っている発酵方法で、米から時間をかけてお酢を造る方法です。アミノ酸や有機酸がたっぷりのお酢になります。

深部発酵とは、穀物酢や安価な米酢などの発酵方法で、強制的に酢酸発酵を行い、あっという間にお酢になりますが、アミノ酸などの栄養はほとんどありません。